●個別腰痛対策●
腰痛と言っても、その原因となる疾患や背景要因は数多くあります。
治療法・対処法には、それら原因によって全く異なるものもありますが、共通する部分もあり、混同するとややこしくなりますよね。
理学療法士として20年程ですがこれまでの経験を踏まえながらお話したいと思います。
現在でも腰をなるべく痛めない様に力だけでリハビリに取り組まず、自分の腰に負担をかけないように心がけています。
以前も参照しましたが、原因の分からない腰痛が85%(非特異的腰痛)と多かったのをおぼろげながら覚えている方もおられると思います。
そして、原因が分かっている腰痛が15%(特異的腰痛)でした。
15%の中で割合が多いのがヘルニアと狭窄症です。
ではまず最初に、腰痛の個別対処法について改めて整理してみたいと思います。
腰痛の正しい知識
Wordで分かり易く描いてみます。
背骨の間でクッションの役割を果たしているのが椎間板です。髄核(ずいかく)が後方へ飛び出し、腰から下へ向かう神経の根元を圧迫する。これが腰部で起こると「腰部椎間板ヘルニア」と言われる状態になります。
神経の伝達速度は速いですから、腰で神経が圧迫されても腰自体が痛くなることは滅多に有りません。
どちらかと言えば、臀部から足先にかけて痛みや痺れが出ることが多いです。
神経圧迫の部位や程度によっては、膀胱・直腸障害(おしっこや便が出にくくなる症状)が起こることもあります。
ヘルニアと狭窄症については、増悪と緩解を繰り返すことが多く、ずっと痛いってことが少ないです。
もちろん手術して圧迫してる髄核そのものを取り除く方法も有りますが、鍼灸治療も効果的です。
実際に鍼をすることで、脳内からエンドルフィンやエンケファリン(痛みを抑制する物質)が出ることが分かってます。
鍼通電(鍼に電気を流す方法)が良く使われます。
内視鏡の手術について「METRx」が主流でしたが、現在は「PLDD」が多くなっていますね。日帰り手術も行われていますから、どうしてもヘルニアの痛みで生活がしにくい(排便や排尿障害が有る)場合は考える必要が有ると思います。
内視鏡のOPEをした患者さんを数多くリハビリしてきました。
OPEをして完治すると言うよりは、OPE後リハビリをして痺れが少しの残っている状態でも元の生活に戻れるって方が多かった様に思います。
強い腓骨神経麻痺(つま先が上がらなくなる等)が出ている。
腰の神経トラブルでそんな場合も有ります。
なんでそんな色々な症状が出るの?
腰の骨「腰椎」は全部で5椎有ります。
腰の神経はL2(第二腰椎)より下は馬のしっぽみたいに沢山の神経に分かれます。
だから、圧迫される神経によっては排便や排尿に関与する陰部神経や強いマヒが起こったりするのです。
逆に言えば、OPEによって上記のような症状が出る可能性もあるってことだけは頭の片隅に置いておいた方が良いと思います。
腰に負担の掛かりにくい姿勢や動作の指導
ウォーキング、ストレッチ・筋トレ等、非特異的腰痛とほぼ同様の内容です。
ストレッチに関しては以前紹介した腰痛予防で確認して下さい。不要になった組織については、本来の位置に無い場合は異物ですからね。
自然に飽食されるわけです。その辺は体の構造は上手く出来ています。
脊柱管狭窄症は中高年以上の方々にみられる疾患です。
加齢や、腰椎への負担が長年にわたって蓄積することによる症状です。背骨や椎間板、また背骨の後方にある靱帯が骨化するケースや、徐々に変形するケースが有ります。
それら骨化したり変形した組織が、脊柱管や周囲の血管を圧迫し、脚の痛みやシビレが生じさせます。
圧迫部位によっては、ヘルニアと同様に膀胱・直腸障害や性機能障害が起こることもあります。
また、『腰椎すべり症』のように背骨の上下が外れる疾患でも結果として脊柱管の狭窄が起こり、同様の症状を引き起こすことも有ります。
脊柱管狭窄症特有の徴候
「腰を反らすと痛みが悪化します」
これは神経が余計圧迫されるからです。
だから、予防体操に身体を反らすなどのメニューは含まれません。
前かがみの方が楽だと言われる方が圧倒的に多いですが、まっすぐ良い姿勢がオススメです。狭窄症の特徴に「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が有ります。
しばらく歩くと足がしびれる。少し休むと改善する。
歩けるところまで歩いて、休憩するのがリハビリになったりします。
基礎体力が落ちてしまうと、生活に支障が出るからです。
何でもバリアフリーが良いわけでは有りません。
バリアアリーがリハビリになるケースも有ります。